2014年7月14日月曜日

昆虫班からの報告 ―ヤツが来た!―

 2012年8月の記事に、サイト内の水たまりが乾いたり溜まったりを繰り返しているらしいという話を書きました。この水たまりは変化を続け、これまでさまざまな昆虫が記録されています。今年の様子を見に行ってみました。

水辺の植物におおわれた水たまり(2014年7月2日撮影, 以下同じ)


 2012年までは、植物はまだ多くありませんでした。2013年中に画期的に増えたようで、今年は写真のように、水面がよく見えないほど茂っています。草にキイトトンボが止まっていました。羽化後あまり時間が経っていないようなので、この水たまりで成長したのでしょう。モニタリングサイトのニューフェースです。

 そして水の中には、何種類かのヤゴ(トンボの幼虫)、ハイイロゲンゴロウの幼虫、コミズムシの仲間などに混じって――いやむしろそれらをしのぐ数の生き物がいました。ドジョウの幼魚です。ついに、魚類が来ました。いったいどこからどうやって来たのでしょうか? ここが別の水たまりとつながっているところは見たことがありません。

まだ完全には色づいていないキイトトンボ

ドジョウの幼魚。在来種か外来種かは今後の宿題

 ドジョウは、下のような小さい水たまりにもいました。上の水たまりとは100mくらい離れています。こちらではハラビロトンボが発生していました。このトンボもニューフェースです。

広い草地の中の水たまり。ここにもドジョウが

ハラビロトンボの♂。♀は黄褐色

Y.I.


2014年7月7日月曜日

昆虫班からの報告 ―変化する環境―

 夏を迎えました。モニタリングサイトはみずみずしい緑におおわれて、目と心に染み入ります。ちょうどテリハノイバラが満開で、ノハナショウブやカワラナデシコも咲いていました。

木漏れ日の差す林床にいろいろな広葉樹が葉を広げている(2014年7月2日撮影, 以下同じ)

咲き始めのカワラナデシコ

 津波の作用で拡大し、被災域の特徴の一つになっていた砂地の裸地ですが、モニタリングサイトでは植物の進入につれて縮小してきました。春から秋まで裸地に無数にいたコニワハンミョウも、今回は1頭見ただけです。草が進入してきた砂地には、アリバチ類やアリガタバチ類が歩いていました。これらのハチは他の昆虫に寄生して育ちます。

 松林の林床にも落ち葉が積もって空き地がずいぶん減りました。アリジゴクも住宅難になってきたようです(下の写真)。この巣の主はクロコウスバカゲロウの幼虫でした。

クロコウスバカゲロウ幼虫の巣

 湿地のまわりを囲むイネ科植物の草地には、たくさんのハマベアワフキがいました。どうしても背中を見せてくれません。

ハマベアワフキ。近づくと向こう側に回り込んでしまう

 ヨシ原も草原も厚みと密度を増し、もう分け入るのも簡単ではありませんが、そこにはたくさんの生き物が抱かれています。環境が変化していく過程で、さらに多くの生き物を育てます。改変が進む沿岸部で孤島のように残ったモニタリングサイトを、生き物の聖域として、どうにか残したいものです。

Y.I.